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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)1014号 決定

〔主文〕1、申立人が、相手方に対し、本裁判確定の日から三月以内に金一二万円を支払うことを条件に、申立人が、別紙目録(二)記載の建物二棟を取り毀し、同目録(一)記載の土地及びその東側隣接地に跨り同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。

2 前項により本件改築が許可された場合、賃料ふ前記金員が支払われた月の翌月分から一ケ月三〇〇〇円に改める。

3 申立人は、別紙目録(三)記載の建物を建築するにあたり、同建物の東側に巾員二米以上の通路を設けなければならない。

4 本件借地契約により申立人が借地上に所有しうる建物の種類を居宅兼店舗に変更する。

〔理由〕(申立の要旨)

1 申立人は、相手方から別紙目録(一)記載の土地58.61平方米(以下本件土地という。)を賃借中にして、同土地及び申立外石川平吉から賃借中の東側隣接地に跨つて同目録(二)記載の建物二棟(以下本件建物という。)を所有している。

2 申立人は、本件建物を取り毀し、そのあとに別紙目録(三)記載の建物を建築する計画であるが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によると、申立の要旨として掲げた1の事実のほか、本件借地契約には、増改築をするには賃貸人の許諾を要する旨の特約が存することが認められる。

相手方は、本件申立を許可すべきでないとし、その理由として、

(一) 本件の如く、既存建物を取り毀し、新たに建物を建築することは、改築の概念に含まれないのみならず借地法第七条との関係においても同法第八条ノ二第二項にいう増改築に該らない。

(二) 本件土地に隣接する相手方の自用地は確か一三坪余に過ぎないのに較べ、申立人の借地は、石川平吉からの借地と合せ六三坪二合三勺あり、申立人は、右借地の南側に本件建物以外に一棟を所有し、これを相手方の妹夫妻に賃貸しているが、その敷地は約三五坪あり、相手方は、本件を話合により解決すべく、申立人に対し、右妹夫妻において賃借中の建物を明渡し、かつ、本件の半分の所有権を無償で譲渡するかわりに残りの借地の返還を求める提案をしたところ、申立人は、これを一蹴し、本申立に及んだのであるが、かかる申立は、権利の濫用であり、許されないものというべきである。

(三) 相手方の自用地は前記の如く一三坪余にして、狭隘のため期間満了の際は更新を拒絶する意思である。

(四) 本件建築が実施されると、相手方は日照上悪影響を受け、また相手方の前記妹夫妻方の玄関は本件建物二棟の間の道路の奥に面しているので、現在は公道に出るのに支障はないが、右通路が本件改築により塞がれると、公道に出るため迂回しなければならず、著しくその通行に支障を来すのみならず、火災その他の緊急事態発生のときは、避難上も困ることになり、本件建築は、土地の通常の利用上相当とはいえない。

と主張する。

しかし、改築とは、既存建物の一部についてのみならず、全部を取り毀してそこに建物を建築することをも含むというべきであるのみならず、改築許可の裁判があつても借地法第七条にいう異議権を喪うことにならないものと解すべきであるので、(一)の主張は理由がなく、(二)の如き相手方の提案を申立人において一蹴して本件申立に及んだとしても、それが権利の濫用に該るとはいいがたく、本件借地契約の残存期間は昭和五一年四月一七日までであと約六年半を残すに過ぎないが、現時点において期間満了時の更新拒絶の正当事由を予測することは困難であるのみならず、増改築許可の裁判は、賃貸人の更新拒絶を奪うものではないので、(三)の主張は本件申立を排斥する理由とはならず、本件の資料によれば、本件土地は、北側の公道に面しており、相手方居宅は本件土地の西側に隣接しているので、本件改築により、相手方居宅の東側が日照、通風等の点において現在より多少不利になることは避けられないが、それとても受忍せざるを得ない程度のものであり、本件改築は公道へ出るため多少迂回することを強いる結果とはなるが、この点についての相手方の主張は誇大に過ぎ、本件改築は、土地の通常の利用上相当であると認められるので、本件申立は、これを許可すべきである。

2 附随処分

本件の資料によると、本件建物は、昭和一一年頃の建築にかかり、既に相当老朽化して改築時期に達していることが認められ、本件改築により借地上の建物の耐用年数が大幅に延長されるので、財産上の給付額は、本件土地の更新価格(鑑定委員会の意見に従い3.3平方米一九万円と認める。)の四%にあたる金一三万円(万円未満四捨五入)を相当とし、賃料については、鑑定委員会の意見及び申立人の意見を参考として一ケ月三〇〇〇円(3.3平方米一七〇円弱)に改定することとし、なお、相手方の妹夫妻が公道に出る通路を設けるのを相当とし、本件の資料によると、本件借地契約上賃借人が借地上に所有しうる建物の種類につき住宅と定められていることが認められるので、右建物の種類を店舗兼居宅に変更することとし、主文のとおり決定する。(小山俊彦)

目録

(一) 借地

東京都江戸川区南小岩七丁目一四四五番三

宅地 119.47平方米(36坪1合4勺)の内58.61平方米(17坪7合3勺)

(二) 右借地上に存在する

1 家屋番号八八三番

木造亜鉛メッキ鋼板瓦交葺平家建居宅一棟

床面積 35.40平方米

2 家屋番号八八五番

木造亜鉛メッキ鋼板瓦交葺平家建居宅一棟

床面積 33.05平方米

(三) 木造二階建店舗兼居宅 一棟

床面積 一階 63.784平方米

二階 59.444平方米

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